ちゅらしっくわーるど

ことりの話し・日々の気づきを宙ららの世界観で綴ります

誕生日

【ポエム・物語り】〜宙ららの世界観の物語りです。あしからず。
《誕生日》
今日は大切な人の誕生日。よく笑うわたしの妹。人のことを決して悪く言わないわたしの妹。辛いだろうに弱音を見せぬわたしの妹。もういないわたしの妹…

病気がちだった妹は、「私が④んでしまったらどうせすぐにみんな私のことなんて忘れてしまう…」よくそう言っていた。

妹は誰もいない家で倒れ、病院に運ばれて。駆けつけた家族に医者はもう助からないと言った。

医者は「これまでこのような状態で助かった者はなく、今まで知る承例で一例としてない」と言った。「残念ですが、もって今晩か明日の朝でしょうね」と妹の余命の宣告をした。

それでも、わたしはその言葉を受け入れることはできなかった。今まで無いのはあなたが知る範中でしょう。例え今までなくても何事も絶対ということはない。最後までどうなるかは分からない。簡単に他人の命を諦めてくれるな。助からないと決めつけてくれるな。ふざけるな!そう思って妹の命の無事を、善き神様、仏様、閻魔様、命を司る神様、見えないもの全てに心から祈った。何も知らなかったわたしはまだ妹とやり残したことが沢山ある。少しでもいいからその時間を下さい。そのためならわたしの寿命を妹に分けてあげても構わない。どうか妹を助けて下さい。そう強く心に願った。

娘の病状を充々承知の父と母は医者の話しを聞き終えて落胆し、肩を落として泣いていた。

わたしも医者の説明は理解していた。妹の状況も分かった。医者の立場ではそうなのかも知れない。けれど、不思議と妹が④ぬとは思わなかった。

妹は「生きたい」と願い「自分の命」を諦めてはいなかったからだ。

妹もわたしと同じ様に病気のことは何も知らされていなかった。それでももしかしたら自分自身のことだから薄々気づいていたかも知れない。けれど、本人が諦めていない大切な命を、他人が勝手に諦めて、簡単に④を受け入れて、「はい、そうですか」「わかりました」と承諾してしまっていいのか。そんな決めつけはどんなことがあっても絶対にする訳にはいかなかった。ましてやそんなことを妹に思わせる訳にはいかなかった。

ひとは④ぬ時は④ぬ。生まれたからにはいつか必ず④んでしまう。でも④ぬと諦めたらそれで終わり。その時から身体はまだ④なずとも、心は④んでしまうのだ。諦めた時から人は④んでしまうのです。

わたしは妹の病室へ行く前に誰もいないトイレの鏡に向かい、妹が助かる未来を心に招く準備をした。涙を拭い、自分の脚を叩き、自分の頬を叩き、心から笑えるまで何度も何度も鏡に向かって笑う練習をした。妹は必ず助かると心を定めた。もうそれ以降は、助かるのに何ですか、、、という気持ちです。

病院にようやく駆けつけたばかりのわたしたちに「ご家族の方ちょっと…」と医者から家族全員集められて中々帰ってこない間の妹の気持ちはどんなだっただろうか。わたしたちが戻ると、ベットで寝ていた妹は「来てくれてありがとう」「もう、だいじょうぶだよ」と不安そうな顔で心細気にわたしたちを気遣い笑って言った。わたしはそんな妹の目の奥をしっかりと見ながら「大丈夫、助かるよ」と妹の心に届くように笑顔で伝えた。助かる未来しか見ていないわたしの心をいくら覗かれても、妹に助からない未来は見えないのだから、不安そうにわたしの顔を見ていた妹も少し安心したようで明るい顔付きに戻っていった。

病室の外で気持ちの整理を付けていた両親に「妹には心配はない。大丈夫だと言っておいた。妹もそう信じている」と伝え、まだ涙目の両親に更に「大丈夫、治るよ、助かるよ」と明るく伝えると両親に笑顔はこぼれたものの当然信じてはいなかったが、わたしが、「そう信じなかったら万一にも妹は助からないよ。妹は助かると思っているのに失礼だよ」と伝えると両親は少し嬉しそうに「そうか、そうだな」と笑顔になって妹の病室に入って行った。そんなことが昨日のことのように思う。

妹は命を諦めずに生きると信じた。わたしもそんな妹の命を諦めずに妹が生きると信じた。やがて諦めていた両親もそう信じた。そのうちに医者や看護士まで助かると信じだした。

それが奇跡か必然か。そんなことはわからない。

ただ、妹はこれまで誰ひとり助からなかった承例の中から助かった承例となり、医者も看護士も首を傾げて驚いていたが、元気に自分の足で歩いて退院をしました。それから約一年弱、何度も家族で旅行にも行き、やり残したことを沢山して沢山の思い出を残して、妹は わたしの誕生日に亡くなりました。

ここでひとつ。ずっと前に聞いたはなし…
この世の誕生日は あの世の命日 で
あの世の誕生日は この世の命日 なんだそうです。

この世のわたしの誕生日が この世の妹の命日で あの世では妹の誕生日…

こんがらがるけど不思議な話し。今日はその妹のこの世での誕生日なのです。

「お誕生日おめでとう!」「いつも見守っていてくれてありがとう」「みんな、忘れてないから安心してね。」「ずっと一緒に遊ぼうね!」

〜”これからもずっと一緒に遊んでください”〜
妹が亡くなる前にわたしの誕生日にくれるつもりのプレゼントに書いてあった言葉。

好きな時にいつでもおいで。楽しそうな時にはいつでもおいで。(わたしが食べたいからだけど…)あとで誕生日ケーキを届けるから待っててね。